バガンの七不思議
ちょっと前まで口にするのも憚られる話がいくつもありました。ミャンマー人同士ではこわくて言えないようなことを、外国人である私には安心するのか、こっそり教えてもらったりしました。
仏教ナショナリズムの強い国ですので、今後どこまで公になるか分からないところがまたロマンです(笑)。
ヤンゴンプレス連載「バガン通信」11月号掲載
バガンの七不思議
考古学的な時代考証が不十分だといえるバガンですが、アンコール王朝とインドシナ半島を二分した大国バガン王朝には多くの謎が存在します。
今回は私が独断で選ぶバガンの七不思議を挙げてみたいと思います。
1.東方見聞録の“銀のパゴダ”
マルコポーロの「東方見聞録」にでてくるミエン(緬)の国がバガンのことであるというのは定説ですが、そこに登場する銀の塔がどこのことだかまったく分かっていません。“金の塔”シュエジーゴンパゴダがエーヤワディー川の水害で移築されたときに、隣りにあった銀のパゴダは水没してしまったなんていう話まであります。
2.アーナンダ寺院の地下室伝説
旧バガン村の人達の間でまことしやかにささやかれているのがこれ。
アーナンダ寺院には地下室があって、バガン王朝時代に政権によって奪われてしまうと考えた寺院が、地下に寺宝を隠しているというものです。その後現在に至るまで安全な時代が訪れたことはなかったので封印されたままだと言われています。
3.ヒンドゥー色の強い壁画
アベヤダナ寺院やパヤトンズ遺跡群の13世紀のパゴダにはシヴァ神などヒンドゥー教の神と思われる壁画が多く残されています。スリランカの大寺派を導入して上座部が強固になったはずのバガン後期に多いのがさらに不思議です。これはインドやベンガルが地理的に近いバガンで、異教徒の流入が少なくなかったことを示しています。
4.ダマヤンジー寺院の尖塔
王族の殺し合いが原因で未完成のままだとされているダマヤンジー寺院ですが、実は尖塔部は地震で崩れた切り口になっています。つまり、本当のところはダマヤンジーは一旦完成したものの、巨大寺院では唯一修復されずにきたということのように思えます。ちなみにこの寺院に幽霊が出るというのは有名ですが、その辺と関係があるのかもしれません。
5.アノーヤター王の3つのパゴダ
アノーヤター王が建てたとされる主要なパゴダはシュエジーゴン、シュエサンドー、ローカナンダの3つですが、オールドバガン近くのシュエサンドーパヤーから他の2つまでの距離は完全に等距離です。明らかに意図されてつくられていますが、今となってはなぜ等距離なのかはわかりません。
6.サイタナジーにあるボートの謎
今年起きた地震で尖塔部が大きく損傷したサイタナ(ジー)パヤーですが、シャン州まで続くトンネルの謎と同時に、地下通路に木製のボートが存在しています。一説にはバガン王朝時代バガンの町は地下水路が張り巡らされ、ボートで行き来できたのだというのです。これが本当だとすると、そのどこかに地下宮殿なんてのがあった可能性さえ出てくるわけです。
7.水没したままのオールドバガンには何があったか
エーヤワディー川の急傾斜地に位置するバガンは幾度も水害を経験しています。そして現在残る城壁の西側3分の1ほどは川底に沈んでいます。ここにかつて何があったのか記録が残っていないのでわかりません。城郭や大仏があったという言い伝えもあったりして、川を調査したら何がでてくるか分からないと言われています。