バガン&ホイアン便り - ミャンマー・ベトナム観光 情報ブログ

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『特集・バガン遺跡』

執筆を担当させて頂いたヤンゴンプレス紙のバガン特集です。

写真提供は加治勝利さん・サラトラベルミャンマーです。

 

ヤンゴンプレス2017年3月号掲載
発見ページ『特集・バガン遺跡』

 

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上座部仏教の遺跡であるバガン遺跡は、ミャンマーの北西部に位置し、地理的にはヤンゴンとインドの中間にあり、気候はマンダレーとともに周辺では珍しくきわめて雨量の少ない熱帯気候に入ります。

 

この地は11世紀から13世紀にかけてビルマ族初の統一王朝があったところで、およそ200年の間に数千もの寺院やパゴダなどの仏教建築物がつくられ、そのうち現在でも2200基あまりが当時のままのものだとされています。

 

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ミャンマー民主化とともにバガンにも多くの観光客が訪れるようになり、日本人にもよく知られた観光地となりました。バガンが特徴的なのは、ひとつには現在まで上座部仏教の聖地であり続けているために、巡礼のために参拝するミャンマー人の信者や各国の僧侶なども多く訪れることです。特にミャンマーは仏教国の中で信仰が深いことで知られているために、観光と信仰の二重の訪問地になっています。

 

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日本では世界三大仏教遺跡と言われますが、その中でバガンだけが純粋な上座部遺跡であり、仏教遺跡の系譜でいえばスリランカのポロンナルワと同時期、タイのスコータイ遺跡の前ということになります。

 

また歴史的には、スリランカ仏教が一度衰退した時期にあたり、モン族の文化とビルマ王朝の前時代のピュー王朝の影響を色濃く残しています。
12世紀になりスリランカ仏教が復活し、現在につながる東寺派が主流となると、バガンもこの新派を採択し、その後インドシナ半島に拡がり現在まで続く一大仏教宗派となるのでした。

 

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バガンの魅力は、何といっても広い範囲に点在する仏塔群で、バガン時代には王朝から庶民までその身分に合わせた規模の建築物ををつくり、自己の涅槃を願いました。またそのほとんどはレンガを使用し漆喰などで外観を整えたものでしたが、現在では風化によってレンガが露出し、遺跡全体が赤茶色という独特の風景を醸し出しています。そしてバガンは、ミャンマーや周辺諸国の中では珍しく年間雨量が少ない土地にあるために、朝日と夕日の名所となっており、マルコポーロも『東方見聞録』の中で、バガンについて“世界の中でももっとも美しい風景のひとつである”と絶賛しているくらいです。

 

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バガンのパゴダや寺院には幅広いバリエーションがあり、主に王族が建立した巨大寺院群や僧院跡、その他一般庶民まで含めて大小様々な仏塔・寺院が現存しています。その中でアーナンダ寺院やダマヤンジー寺院などはミャンマー人にとって一生に一度は参拝すべき寺だとされ、季節に関係なく年中賑わっています。

またシュエジーゴンパゴダはその後ミャンマー中のパゴダの原型となり、全国各地にその影響を残しています。

 

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面白いのはバガン遺跡では女人禁制というものがほとんどありません。現在も信仰対象であるにも関わらず、上層階にある仏像などを女性も拝むことができる点で、ミャンマーの他の観光地と大きく異なります。上座部が古典的な教義でありながら、バガン遺跡が欧米人観光客に人気が高いのは、バガン観光がジェンダーレスであることも理由の1つに挙げられるかもしれません。

バガン王朝が崩壊したあと、今の考古学保護地域は少数の僧院が残る以外はミャンマーの他地域と同じように農村地帯となっていたために、何百年ものあいだ遺跡の脇で豆や胡麻などを栽培してきました。これがまた牧歌的な風景をつくりだしていて、観光客にとっては大きな魅力になっています。

 

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バガンを大きく分けると、遺跡の中心であるオールドバガン、主にバジェットホテルから中級ホテルが多く集まるニューバガン、タウンシップの中心ニャウンウーの3つからなります。

この中でオールドバガンはバガン王朝の王宮があった場所で、仏教建築物も集中しています。一方空港周辺にもバガン後期の遺跡が多く存在するパヤトンズ遺跡群があり、こちらも最近では多くの観光客が訪れます。この2つは是非とも訪れたいところです。

 

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バガンへの行き方は、空路がもっとも多く、直行便でヤンゴンから1時間20分、マンダレーから30分の距離にあります。現在定期便は国内線のみとなっており、国際線の乗り入れはありません。空路以外ではヤンゴンからバスが多数運行されていて日本人利用者も多いです。その他マンダレーからのクルーズ、鉄道もあります。
バガン観光のまわり方として一般的なのは、車でまわる方法と最近はEバイクで移動する人が増えています。以前は自転車も主流でしたが坂道が多く、その上深い砂道があるのでEバイクが普及してから利用者は少なくなっています。その他馬車も相変わらず人気があります。

 

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バガンに欠かせない朝日と夕日ですが、朝日鑑賞は気球に乗るかパゴダに登って鑑賞するというのが一般的です。夕日鑑賞は、同様にパゴダに登るかサンセットボートを利用する人が多いです。バガンは四方に仏塔群が散らばっているので時期に関係なく、パゴダと朝日夕日が同時にファインダーに収まるというのが人気の理由でしょう。

 

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宿泊施設はゲストハウスから高級ホテルまで100軒ほどがあります。このうちゲストハウスはニャウンウー周辺とオールドバガンに向かう途中の村ウェッジーインに固まっています。遺跡の中心オールドバガンにも5軒の中〜高級ホテルがあり人気があります。その他遺跡にあるホテルとしては、ゴルフ場を併設するアメージングリゾート、高級ホテルのオーリアムパレスがあります。バガンでは移動手段が限られてくるので、価格帯とロケーションによって決めたいところです。

 

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観光に適した季節となると、雨季のほとんどないバガンでは一年中観光できると言えますが、その中でも11月~2月はほぼ毎日快晴に恵まれるベストシーズンとなります。それ以外でも5月ぐらいまでは雨がほとんど降りませんが、3月後半から気温が上がり暑くなります。日本の夏休みにあたる7月~8月はヤンゴンでは雨季の真っ只中ですが、バガンでは雨が少ないために観光に相応しい季節となっています。

 

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世界三大仏教遺跡のひとつに数えられるバガンですが、バガンに多く見られるピラミッド型の仏塔の形状がボロブドゥール遺跡の影響を受けているという説があります。ただボロブドゥール遺跡は8世紀に建造されたものであり、当時ミャンマーはピュー王朝全盛期、東の国境は古クメール王朝と接して、いずれも仏教国家でした。ヒンドゥー教が勢力を拡げる前のインドシナやマレー半島などは、多かれ少なかれ仏教(特に大乗仏教)の影響を受けていますので、時代の違う遺跡を比較するというのはあまり意味のないことかもしれません。

一方、アンコール遺跡とバガンとなると、これはインドシナの覇権を競った同じ時代の大国同士ですので相互に影響し合ったことでしょう。あまり知られていませんが、バガン王朝の中にはクメール人の大臣がいたという記述もあって、いま考えられている以上に近しい関係だったのかもしれません。

 

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ただバガンには、他の2つの遺跡と大きく異なる点があります。それはバガンが“生ける遺跡”だということです。バガン遺跡は本当のところ遺跡とは言えません。なぜなら現在まで連綿と続いている仏教の聖地であり、バガンにあるすべてのパゴダは現役のお寺と同じように土足で上がることの許されない信仰対象であるからです。

 

バガン王朝初代のアノーヤター王が初めて上座部仏教を国教としてから千年の間、ミャンマーでは一度も途切れずに上座部を信仰してきました。バガン王朝が崩壊し、田舎の農村に落ちぶれていたのどかなバガン村でも、主要な寺院は信仰対象として存在し続けてきました。
そしてこれからもバガンは、遺跡全体が信仰物という世界でもひときわ異彩を放った観光地としてあり続け、多くの観光客を魅了するのです。

 

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